お金の相場の歴史と展望
金相場は、国際政治に翻弄された歴史的局面が色濃い。翻弄の節目を振り返ってみたい。
1972年のいわゆる「ニクソンショック」。戦後経済を牽引してきた米国は疲弊困憊して、インフレ禍に陥落した。金・ドル本位制(1 オンス・35$)の維持は困難になった。時のニクソン大統領は、金・ドル本位制の停止を宣言した。これが為替の完全変動相場制の入口ともなったわけだが・・・。
ニクソン宣言以降、金相場は、投機色の濃い様相に転じていった。1973年、金価格(米ドル/1トロイオンス)は63・90ドルまで売り込まれた後、1980年にそれまでの最高値850ドルまで、13倍強値上がりしている。田中貴金属の記録でも、この間690円(円/1グラム)から3645円へ5・28倍に値上がりしている。
そして、1980年を境に金相場は大きな逆振れに転じた。金・ドル本位制下で、準金融資産として金の保有に注力した欧州各国が政策を、「利食い」から入り、投機相場の片棒を担ぐ方向に舵を切ったのである。具体的には、年間一定量の売り&鉱山業者や金投資家に保有金を貸し出しで手数料を稼ぐという施策を執ったのである。
結果として、金相場は下落の一途を辿った。そうこうするうちに、欧州の金保有国の間に、「純金融資産としての対応をしなくてはならない」という機運が高まった。1999年252・80ドルまで値下がり(田中貴金属ベース917円)した時点で、欧州中央銀行(ECB)総裁と欧州15カ国の中央銀行総裁が真夏の米国・ワシントンに集まり鳩首会談、今後の方向性で合意した。ワシントン合意と称されるが、その主たる内容は、以下のとおりだった。
●既に定めた売却計画を実施後は、金相場の売り手から撤退する。
●鉱山会社や投資家への(信用取引上の)金の貸与から、一切手を引く。
この合意を機に、金相場は反転、ジリ高から高騰へと移っていったのである。従来の高値850ドルに2009年肉薄(810ドル)、2010年には1000ドル大台に乗り、昨年2011年には1316ドルまでつけた。
さて、今後の金相場だが、「インフレに強い金」という側面は、依然とし継続しよう。ただ同時に頭に叩き込んでおかなくてはならないのは、金取引の8−9割が「実需」という点である。宝飾品需要もあろうが、精密機器の部材としての需要が大きなポイントになる。つまり、世界経済が上向きになる時、理論上、金価格は上昇する。